「谷中さんは狙い打ちが出来る人。2メートル以内は入れてくる」とライバルたちに言わしめるほど、いぶし銀のベテランゴルフを披露した谷中宏至(74)が最終ラウンドを71ストロークで回り、第1ラウンドに続いて2日連続でエージシュートを達成。通算1オーバー2位に2打差をつけて大会連覇を果たした。
「第1ラウンドは丁寧にボールとラインの意識が強すぎてパッティングが決めきれなかった」と谷中は振り返る。それならば「勘を信じてやってみよう」と最終日最終組でスタートした。1番ホールでトーナメントリーダー山下英章(69)がショットを曲げてボギー。3番ホールで再び山下がボギーに。谷中は2メートルのバーディーパットを沈め、ここで山下との差が無くなった。山下は5番でバーディー、6、8番でボギーと悪い流れが止められない。一方谷中は7番パー5ホールでアプローチをミスしボギーとしたが、9番では3メートルのタッチをきちんと合わせてバーディー。フロントナインを終えて、1打差で拮抗状態から抜け出したことを知る。
後半の10番パー4で谷中はセカンドショットを左奥へ打ち込んでしまう。さらにアプローチミスで10メートルのパーパットを残したが、これが打ち出しラインと傾斜の読みが合い、脅威のパーセーブ。心理的にも大きく作用したことになる。せめぎ合いが続いたが、谷中は自分のペースを貫いた。「エージシュート」という目標を立てたことも、安定のプレーに繋がり、スコアを落とす仲間を横目にしながら、通算1オーバーで大会連覇を達成したのだった。
「入っても入らなくてもいい。グリーンではポーンと打つこと。もう、老人ゴルフだよね」と微笑んだ。ショットもパッティングも一定のペースを守り、流れを変えることはなかった。「勝負に対するこだわりはないんです。ただエージシュートは狙っていました。真剣すぎるとね、イップスになりますよ。ゴルフはだいたいでいいんです」。自分のゴルフを信じた結果がエージシュート、さらに優勝を結び付けた。
谷中は香川県にある高松グランドカントリークラブに長年所属している。支配人としての職務を全うし68歳で支配人業を引退。仕事に向けていた情熱を自分のゴルフに捧げることにした。これまでできなかった選手としての差を埋めるべく、必死に練習に励む毎日だった。引退した年の2016年関西プロゴルフゴールドシニア選手権で優勝すると、2019年に関西ゴールドで2勝目を挙げる。2021年のティーチングプロゴールドシニア選手権で第1回チャンピオンとしてタイトルを獲得し、今回の大会連覇という偉業を達成したことになる。今では長年付き合いのある高松グランドのメンバーさんとラウンドを共にし、実践プレーを楽しむためのアドバイスをする。心身ともに充実したレッスンライフを送る日々を過ごしている。
「私は68歳・ゴールド入りから新しいプロゴルフ人生が始まりました」とこれまでの歩みを振り返る。「だいたいでいいんです。コースにきてから練習に励むのではなく、それまでの取り組みに自信を持って、コースでは自分の実力相応の中でやり切る。今は練習も含めて、ゴルフできることが本当に楽しい。これからも挑戦させていただきますよ」と破竹の笑顔を見せて大会を締めくくった。