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【日本GGユニテックスHD杯/FR】久保勝美は61歳の誕生日に自ら日本タイトルをプレゼント!絶好調のパッティングは「カップに向かって打たない」

2023年09月30日

60歳以上の日本一を決める今年の「日本プロゴルフグランドシニア選手権大会」は、トータル7アンダーで並んだ久保勝美が東聡を、プレーオフ2ホール目で下して初優勝。優勝賞金240万円を獲得した。久保は5月の「関東プロゴルフグランドシニア選手権大会」にも優勝しており、関東グランドと日本グランドを同一年に勝った7人目の選手となった。


きょう9月30日は久保の61歳の誕生日。優勝インタビューでは「誰もプレゼントくれないので、自分で頑張ってご褒美がきました」と会場の笑いを誘った。



初日を5アンダー・単独トップで飛び出し、最終日も2番でバーディを先行させて、5番まで順調にトーナメントをリードしていた。ところが、6番パー5では「セカンドで風がわからなくて、アゲインストで思ったように飛ばなくてバンカーのアゴにくっちゃいちゃった」と、5オン・2パットで痛恨のダブルボギー。トップの座を倉本昌弘に奪われた。


追う立場となったが、9月上旬のシニアツアー、「コマツオープン」で優勝している久保に焦りはなかった。「終われるより追うほうが楽だなと思って、気が楽だなと思いました」。これでグランドの部は、倉本、東聡、堤隆志、清水洋一と次々とトップが入れ替わる大混戦に。後半に入って堤が3つのバーディを奪って、トータル8アンダーで抜け出す。余裕を持っていた久保も13番では最大4打のリードを許し、「どんどん離されちゃって、参ったなと思った」と感じていた。



そこから久保は、13番で5メートルを入れ替えして3打差に。続く13番では3メートル、15番では70センチを沈めて、3連続バーディで1打差まで巻き返した。「残り全部獲らないとダメだな」と、16番も手前の70センチにつくチャンスだったが、これを外して追いつくことができず。堤がトータル8アンダー、久保と東がトータル7アンダーで最終18番を迎えた。



「堤は8アンダーになってからパッティングがショート気味だったんですよ。やっぱり守りたかったんですかね」。18番パー4は左奥の難しいピン位置だったが、「勝負は最後までわからない」と久保は考えていた。



すると、堤はセカンドショットをグリーン左の下がったところに外す痛恨のミスでダブルボギー。東の3メートルのバーディパットはカップをクルッと回って沈まずパー。清水はセカンドショットをミスして、カップの手前20メートルの距離を残していた。ファーストパットを1.5メートルオーバーさせながらも、「返しは打つ前から入ると思っていた」と見事パーセーブ。堤は優勝トロフィーに片手をかけながらもトータル6アンダーで脱落し、勝負はトータル7アンダーで並んだ久保と東のプレーオフに突入した。



プレーオフ1ホール目は、久保が4メートル、東が3メートルにつけるも、ともにパーで決着がつかず。2ホール目は久保が10メートルに乗せたのに対し、東が4メートルのチャンスにつけて有利な状況を迎えたが、先に久保がフックラインを完璧に読み切ってバーディを奪取。東のパットはカップの左を抜けて決着した。



久保はこのウイニングパットについて、「OKに寄せればいいやと思ったんです。最初の(正規の)20メートルのパットでラインを見ているので、これくらい切れるんだろうなというのは分かっていました。そうしたら途中でラインに乗りました。やっぱり転がりがいいと、ラインに乗るんですよね」と振り返る。



初日に同じ組でプレーしていた倉本も「パターがいいな」と久保のパッティングには舌を巻く。今大会でも芝目と傾斜で読むのが難しいグリーンに多くの選手が手を焼くなか、久保だけは「乗ればなんとかなる」と、2日間とも自信を持って打てていた。本人は「みんなに褒められるから、余計に自信になってきた」と笑う。そして、「ゴルフ人生でこんなにパターがいいのは何十年ぶりか。人生で一番いいかもしれない」とまでいう。


そんな絶好調のパッティングの意識について聞くと、「企業秘密なんですよね」と笑顔。それでも、「肩でストロークするとか、頭を動かさないとか、基本的なところを練習していたら良くなったんですよ」と少し教えてくれた。さらに「入れたいという気持ちよりも、いいパッティングをしようとしたら良くなった。技術的な部分ではなく精神的な部分も大きいですね」とつけ加える。



また、パットの練習方法にもポイントがある。「カップに向かって打たないんですよ。カップを狙うとリズムが早くなったりする。だからゴミとか芝の色が変わっているところを狙っていつも練習しているんです。それで本番はカップよりもラインを意識して、そこに打つ。狙いとかリズムとか練習方法をちょっと替えたときに、緊張したときでも意外とスムーズに動いてくれる。何か分からないんですけど、しびれないんですよ」。正規の18番で1.5メートルのパーパットを難なく沈められたのも、そんなところに理由がありそうだ。



今大会で誰もが欲しい日本タイトルを獲得した久保。大きな優勝トロフィーには中村寅吉、石井朝夫、陳清波、飯合肇といった日本ゴルフ界を彩ったそうそうたるメンバーの名前が刻まれている。「昔、自分が若いときにテレビで見ていたり、雑誌で見ていたり、そういう先輩たちの名前が刻んである。そこに自分の名前を入れることができてうれしいです」。



久保はレギュラーツアー時代、優勝どころかシードを獲得することもできなかった。当時は尾崎健夫、尾崎直道、倉本、飯合といったスターたちと「口も聞けなかった」が、いまシニアツアーの舞台では、「一緒に飲むぞと電話がかかってきたり」と目をかけてもらえて、実力を認めてもらえている。そんな“今”が楽しくて仕方がない。だからこそ、この充実したツアー生活を「1年でも長く続けたい」という思いがある。



一昨年、昨年は賞金ランキング30位以内のシードを何とか掴んだ。そして今年、優勝したことにより、来年の出場権を確保することができた。「この調子はいつまで続くか分からない。ただ自分はこれをやったら良くなったというのをコツコツ続けていくしかない。たとえ悪くなっても」と、久保にまったく慢心はない。



また、数年前に出場した日本と台湾の対抗戦「富邦仰德シニア盃」では、パーティや記者会見で多忙ななか、ホテルのジムで倉本が走り、崎山武志がストレッチするのを目撃した。室田がホテルの周りをよく走っているのも知っている。「試合が終わったあとにもトレーニングとか必ずやっていますから、部屋でゆっくりしていたら、シニアツアーでは置いていかれるなと思いました。倉本さんが半ズボンになったときのふくらはぎは半端じゃない。68歳でカモシカみたいな脚をしていますから」。



コツコツと自分を磨きながら、61歳にしてゴルフキャリアの全盛期を迎えている男は、次週はシニアメジャー「日本プロゴルフシニア選手権」に挑む。今度は宮本勝昌や藤田寛之、片山晋呉といった、50代前半の若い選手たちと競うことになる。それでも久保は「いいゴルフができたら10位くらいには入れる」と自信をのぞかせた。