横山明仁にとって久しぶりの実戦は、2月に結婚したばかりの新妻が初キャディを務めていた。そんな横山を見て仲間たちが「いいなー」とうらやむ。それもそのはず。結婚したとき、横山は62歳、相手の女子プロ、小貫衣織(おぬき・いおり)は39歳。実に23歳の年の差婚なのだ。
そんな横山夫婦が初タッグを組んだのは、60歳以上の日本一を競う「日本プロゴルフグランドシニア選手権大会」。きょうの初日は、レギュラーツアーで通算30勝を挙げた永久シード選手の倉本昌弘、今月の「コマツオープン」でシニア2勝目を挙げたばかりの久保勝美、シニアツアー通算7勝の崎山武志の「一番濃い」組み合わせ。
レギュラーツアー通算3勝の横山は、「きのうから僕と奥さんは緊張していて、濃いメンバーで集中できたのかな」と、一時は4アンダーでトップに立った。しかし、後半2つ落として2アンダーは4位タイ発進。それでも「途中でトップになれたのはうれしい。ひさびさの試合でもう上出来ですね」と、5月の「関東プロゴルフグランドシニア選手権大会」以来の実戦としては悪くない立ち上がり。5アンダーでトップの久保とは3打差で、あすの最終日に逆転を十分狙える位置だ。
プレーより気になるのは、23歳下の妻とのなれそめ。横山と小貫は所属先が同じ国際スポーツ振興協会ということもあり、会長を務める半田晴久氏とよく3人でラウンドしたり、一緒に練習をする関係だった。「5年くらいは何も」なかったが、横山の還暦の誕生日に「誰も祝ってくれなくて何となく電話したら、一緒にご飯に行ってくれたんです」と急接近。ほどなくして、横山から「結婚を前提に付き合ってくれないか」と告白した。
すると小貫からは、「私の誕生日までお試し期間でいいよ」と斬新な答えが。ちなみに、横山の誕生日は1月12日で、小貫の誕生日は9月10日。小貫の誕生日も一緒に過ごし、横山が“更新”のお願いをしたところOKの返事。そして今年の2月14日、付き合って丸2年でめでたく入籍した。横山は再婚で小貫は初婚となる。
では、小貫は23歳年上の横山のことをどう思っていたのか。出会った頃は「すごいプレーヤーというのは知っていて、尊敬する先輩みたいな感じでした」と振り返る。歳の差については「気にならなかったです」。そして「(若いときの)ゴルフの話が面白かった」と印象は良かった。横山から結婚を前提に交際を申し込まれたときには、「自分が結婚する感覚があまりなくて、私でいいのかなって」と、そこまで本気で受け止めていなかった。
その後、「何となく一緒にいて全然変わらなくて、いつも楽しい感じ」と、2人でいることが徐々に自然になっていった。横山もまた「普通にいて違和感がない」と、2度目の結婚にためらいはなかった。
大会は明日の最終日を残すのみ。このまま「新婚パワー」で優勝をつかみたいところ。「やっぱり(奥さんに)良いプレーを見せたいですね。模範となるゴルフを示さないといけない。きょうは70だったけど、あしたは60台で回る」と夫は意気込む。3週後の国内女子ツアー、「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」では、小貫のキャディを今度は横山が務める予定。妻にお手本を見せるためにも、そして家計のためにも、1つでも上の順位で終えたい。