出場84人中77人がオーバーパーを打つほどの強い風が吹いた初日。鈴木亨は唯一のアンダパーをマークしてトップ発進を決めた。しかし、2日目は4つのボギーを叩いて4位タイに後退。3打差で追って逆転優勝を目指した最終日は、「守りに入ったら弱気な鈴木亨が出るから、『絶対に勝つんだ』と内に秘めながらやっていた」と、6バーディ・1ボギーの「67」と猛追。しかし、優勝した宮本勝昌には1打届かず、トータル8アンダーは単独2位に終わった。
「昨日(2日目)が8番、9番、12番、15番とショートパットを4発くらい外して、それが最後まで響いたというのがあります」と、優勝を逃したことに悔しさをにじませる。しかし、単独2位の賞金480万円を加えて、賞金ランキングは開幕前の35位から16人抜きの19位にジャンプアップ。同ランキング上位30人に与えられる賞金シードに最後の最後に滑り込み、それを8年連続に伸ばしてシーズンを終えたことには満足感がある。
鈴木は賞金シードを落としたとしても、レギュラーツアーとシニアツアーの獲得賞金を合算した『生涯獲得賞金ランキング上位20人』の資格を行使すれば来季のシニアツアーには出場できるため、「賞金シードにはあまりフォーカスしないでやりたい」と初日のラウンド後には話していた。それが「シードもあまり関係ないとは言っていましたけど、シニアオープンの予選に行かなきゃ行けないのは、自分のなかで相当な屈辱だった」と明かす。
来年の「日本シニアオープン」の出場資格の1つが、賞金シードと同じく『23年のシニアツアー賞金ランキング 上位30位』。そこに漏れれば予選会から戦う必要性も出てくる。だからこそ「今日だけのことを考えれば、良いゴルフができた」と考えている。
また、最終戦の舞台となっているいぶすきゴルフクラブは、2000年のレギュラーツアー「カシオワールドオープン」、そして18年、21年大会と3度優勝カップを掲げている鈴木の得意コース。毎年3月には合宿も行うほど関係性は深い。いつも「ここには僕の運が良くなるものがある」と信じて戦っている。最終戦で今季最高成績が出たことには、「やっぱりそれは運ですよ。先週の僕と今週の僕が大きく変わったっていうのは、この歳でそんなことがあるわけない」と話す。
来年5月に58歳の誕生日を迎える鈴木には目標がある。長男の貴之さんと「日本プロ」に出場することだ。「息子はティーチングプロの資格を取っているので、予選会に一緒に出られる」と楽しみにしている。24年の日本プロの会場は岐阜県の富士カントリー可児クラブ 志野コースで、「あそこはチャレンジで勝っているので行きたい」ともいう。14年の下部ツアー「富士カントリー可児クラブチャレンジカップ」は鈴木が制した。
「まだ老け込みたくない。僕はゴルフに対してはいつまでもチャレンジだと思っているので、いつまでもチャレンジし続けていく自分をお見せできたらなと思います」。最後にそう来年の抱負を語った鈴木のゴルフウェアの胸には『keep on challenging』という文字があった。