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シニアツアー

【いわさき白露シニア/FR】「ワクワク感は8月くらいから」 賞金王の宮本勝昌が2025年の出場を目指す憧れの試合

2023年11月26日

  今季の最終戦「いわさき白露シニア」は、単独トップでスタートした宮本勝昌がトータル9アンダーまで伸ばして1打差で逃げ切り、シニアツアー3勝目を挙げた。同時に自身初めて賞金王のビッグタイトルを獲得。大会2勝の鈴木亨が6バーディ・1ボギーの「67」と猛追するも1打及ばす、トータル8アンダーで2位。トータル6アンダー・3位タイには寺西明と横田真一が入った。



 宮本は前半だけで3つのバーディを積み重ねて、後続に3打差をつけて後半へ。このまま独走態勢を築くと思われたが、11番パー4では2メートルに3オンさせた後、まさかの3パットでダブルボギーを叩き、後続とはわずか1打差に。試合の行方はまったくわからなくなった。それでも宮本は「フラットな時間が長かった」と落ち着いていた。



 「ボギーは出るものだと思っていたので、ダブルボギーは余計でした。ストロークは2つ下がりましたけど、気持ちの貯金みたいなものがあって、精神的にはあまり変わらなかったです。タイタニックの沈没シーンの音楽がかかるような、慌てることはなかったですね」



 13番パー5では残り67ヤードからの3打目を60センチにつけてバーディ。17番ではピンの手前8メートルからバーディパットを沈めて、鈴木との差を2打に広げ、最終18番パー5に突入した。1つ前を回る鈴木が最後をバーディとして1打差。宮本のグリーンの花道から3打目のアプローチは「ダフってはないんですけど失敗です(笑)」と大きくショートさせたが、きっちり2パットのパーで締めて逃げ切った。



「気持ちの貯金があったからこそ、最後まで落ち着いてプレーできましたし、ラッキーも数多くありました」。最終日はドライバーが右に散り、パターでは左に引っかけるミスが何度も出ていたが、9番では10メートルを沈めてバーディ。15番ではドライバーで「打った瞬間にまずい」と右に飛び、暫定球まで打ったが1球目が見つかってパー。終盤17番では8メートルを決めてバーディと、宮本のいうように運もあった。



 「もっともっと力をつけて、ラッキーがなくても優勝できるような選手にはなりたいですよね」と、51歳の向上心は衰えない。さらに、「日本の選手でラッキーがなくても優勝できるのはジャンボさんと片山だけだと思っているんですよ。この2人は『今週はラッキーがないな』と言っても勝てるくらい強かった。僕にはそう見えた」と続けた。尾崎将司はレギュラーツアーで歴代1位の通算94勝、水城高校・日本大学で宮本の同級生だった片山晋呉は、通算31勝を挙げて永久シードを獲得している。


 30センチのウイニングパットを沈めたグリーンサイドには師匠の芹澤信雄と、兄弟子の藤田寛之が待ち構え、宮本を祝福。「一生師匠でしょうね」と、弟子はしみじみ語る。レギュラーツアー時代は芹澤、藤田、宮本で常に行動をともにし、ツアー中の夜の食事はもちろん、シーズンオフのイベントの仕事も一緒。家族よりも圧倒的に過ごす時間は長かった。芹澤がシニアツアーに転向してからは会う機会も減ったが、藤田、宮本の順でシニア入りしてからは、また一緒の時間が増えた。



 「芹澤さんのそばに行ったらいつもゴルフを見てもらえるかなと思って」と、芹澤の住む静岡県御殿場市に家を建てたのが20年前。「昔からお兄さんのようなお父さんのような、一人何役もやっていただいている存在なので、公私ともにまず芹澤さんに相談していましたね」。優勝を見守った師匠は「本当に良かったです」と賞金王獲得を喜んだ。



 シニアツアーは今年の全日程を終えたが、まだ宮本のシーズンは終わらない。次の土曜日には米アリゾナ州に飛び、現地時間の12月5日から4日間の日程で行われる米シニアツアーの最終予選会に出場する。今年は『レギュラーツアーの賞金シード』、『シニアツアーで優勝』を目標に掲げてスタートし、8月の「ファンケルクラシック」でシニアツアー初優勝を挙げてからは、『レギュラーツアーの賞金シード』に『シニアツアーの賞金王』と『米シニアツアーのQT突破』の2つが加わった。



 昨年までは保持していたレギュラーツアーの賞金シードこそ逃したものの、今週シニアツアーの賞金王を達成し、次は米シニアの最終予選会(QT)を突破して出場権をつかむことに照準を合わせる。「パターのフィーリングもショットの調子も、QTで最高潮になったら良いと思っていた。QTに向けて100%自分の持っているものを出したいと思います」。



 宮本は今年5月に出場した海外シニアメジャー「全米プロシニア」で、予選ラウンドを単独2位で突破すると、最終的に10位タイで大会を終えた。「自分がいいプレーしたら向こうでも上位いけるなとちょっと自信がついた。憧れの夢が近い目標となってきた」。宮本のいう“憧れの夢”とは前年のチャンピオンたちが集う米シニアツアーのシーズン開幕戦、毎年1月に開催される「三菱エレクトリックチャンピオンシップ at フアラライ」に出場することだ。


 場所はハワイ島のフワラライ・ゴルフコース。チーム・セリザワは毎年オフにハワイ島で合宿するのが恒例で、「テレビとかでもよく見ていたり、フワラライが好きで何回かプレーさせてもらったこともある。5、6年前から何となく優勝したらここで回れるんだな、出てみたいなと思っていた」と、宮本にとってモチベーションとなっていた。



 米シニアツアーの最終予選会は76人が挑戦し、コンスタントに来季出場できるのはたったの5人という狭き門。「アメリカのシニアツアーでいきなりトップ5に入るのは難しいかもしれないけど、QTだったらさすがにそれよりレベルが下がる。本当にナイスプレーが4日間できたら、僕は行けると思っている」と突破の可能性を感じている。




「ワクワク感は8月くらいから感じています」とも。50歳を過ぎても宮本の向上心やモチベーションは落ちていない。「シニアは面白いっていうワードは出ますけど、やっている僕も楽しいです。シンゴ(片山晋呉)やカナメ(横尾要)といった同世代や、倉本(昌弘)さんとか加瀬(秀樹)さんとか奥田(靖己)さんとか真板(潔)さんとか、諸先輩方と一緒に回るのも大好き」と、いま本気でシニアツアーを楽しんでいる。



「ゴルフは生涯スポーツというけど、プロゴルファーも生涯プロスポーツと言えるんじゃないかくらいゴルフって特別だなと思いましたね。いい仕事を選んだなと。本当に幸せだなと思います」。元プロ野球選手や元Jリーガーの友人たちがセカンドキャリアを歩むなか、宮本はいまも現役でゴルフを続けている。30代の頃は野球やサッカーの球団から出る1億、2億といった年俸をうらやましがっていたが、今では「まだやっていていいな」と逆にうらやましがられている。



 レギュラーツアーの賞金シードは失ったが、『生涯獲得ランキング上位25位以内』(宮本は9位)を行使すれば、来年1年はレギュラーに出ることも可能。「アメリカのQTに通ったら、多分来年のレギュラーには出ないです。アメリカのシニアがダメだったら、権利を使って日本のシニアを組み込んでから、レギュラーを当て込めていく。とりあえずはQT次第ですね」。早ければ2025年の米シニアツアーのオープニングゲームに、笑顔で楽しそうにプレーする宮本の姿があるかもしれない。