「賞金ランキングシード圏内の金額を稼ぐまでは油断できないですし、1試合でも早くランキングを確定させたい」と第1ラウンド後に話していたシニアルーキー増田伸洋。第2ラウンドは70(1位タイ)、第3ラウンド71(3位)とアンダーバーでのプレーは最初から優勝争いメンバーに。増田は強い決意の下、最終ラウンドまで戦い抜いた。
スタート1番パー5ホール。増田はティーショットを左に引っ掛けていきなりOB。グリーンも微妙な距離が残りダブルボギー発進とつまずく。しかし2番で1メートルを沈めると、4番でもピン奥から3メートルを決めてスコアを戻した。ところがバーディーチャンスが決まらない。ピンポジションが難しいうえ、パッティングのタッチも掴みにくい。12番パー4は結局4日間ボギーとリベンジならず。それでも最後まで集中力を切らさずに上がり3ホールで2つスコアを伸ばしてフィニッシュ。4日間なんとかアンダーパーで回り、通算8アンダーは4位タイ。獲得賞金を約819万円に積み上げて、ランキングは10位に上昇。次戦の日本プロシニアでは、重圧にとらわれることなくプレーを味わうことができそうだ。
実は増田が一番狙っていたのは、来年の日本シニアオープン出場資格だった。「自分のゴルフのスタートでもある千葉カントリークラブ川間コースで開催すると知り、絶対に出場したいと。シニアという立場で、ナショナルオープンの出場選手としてコースを訪れて、これまでお世話になった方々にお礼も伝えたいし、それがプレーで示せたら一番いい。なにがなんでも出場資格を確定させたかった」。この4日間の戦いを終え、賞金ランキングの上位フィニッシュと、来年日本シニアオープンの出場資格獲得の両方を叶えることができた。
初の公式戦出場。当初から優勝争いに加わるとは思いもよらなかったが、シニアルーキーというだけで高い注目も集まった。「2日目の朝、室田(淳)さんから『緊張するなよ。遠慮せずに行ってこい』と声をかけてもらったんですよ。その言葉がすごく励みになりました」。トッププロとして活躍したプロ同志にしかわからない「見えない緊張」も、シニアでは互いを高めあえることを知った大会になった。
優勝争いという立場で迎えた最終ラウンドは、プロゴルファーを目指している息子・康輔さんと奥様が急遽応援に駆けつけた。「18ホール応援できて良かったです。これで来年もシニアツアーに参戦できそうですよね、大丈夫ですね」と息子は嬉しさをかみしめた。父は「優勝ではないけど、プロとして戦った姿をわかってくれたかな」と満面の笑みを浮かべた。最終ラウンドでは父の激闘を目の当たりにし、プロゴルファーとして厳しさと、辛苦を乗り越えた先の喜びを共に味わった。父の背中は強く逞しい後ろ姿に映ったことだろう。