午前組では4バーディー・ノーボギーで回り68をマーク。通算5アンダー3位タイに浮上したのが鈴木一徳(かずのり)、51歳。ホールアウト後「イットク(一徳)、ナイスプレー」と仲間のプロから声をかけられて照れ笑い。それでも「バーディーパットはみんな1メートル以内でした。あまりゴルフしていないのに、いい結果になってびっくりです」と本人も目を丸くした。アウト1番からスタートし3、4番で連続バーディー。6番でもバーディーと波に乗る。しばらくパーで我慢が続いたが15番でようやく4つ目のバーディー。流れを切らさず、最後まで集中した結果だ。
昨年の日本シニアオープン(タラオCC)でシニアデビューを飾ったが、自宅出発前に首を痛めて思うようなプレーにつながらず予選落ち。10月の日本プロシニア、ISPSやっぱり面白いシニアと3試合のみに出場。今年のシニア予選会は1次予選落ちということもあり、シニアオープン出場だけを目指してゴルフに取り組んできた。
鈴木は「あまりゴルフをしていない」と話したが、それはモチベーションの所在にある。「49歳、2年前に介護をしていた父が亡くなりました。50歳でゴルフができるのかなって思っていたら、実際ゴルフができなかった」。長きに渡り父の介護に向き合っていたので、父親の存在を失った空虚な感覚と、ゴルフに対する強い情熱が失われていた。さらにそのころ腰の手術もあり、心身ともにゴルフに向き合うには時間が必要だった。
それでも鈴木はゴルフ人生を歩み続けている。プロ入り前からかれこれ30年近く、地元の練習場にお世話になっており、こつこつと練習を重ね、レッスンにも精を出してきた。腰を手術したこともあり「この年になってケガしない、無理しない」生活を心がけてきた。シニアオープン最終予選会を通過してから3週間もの期間、ラウンドをしていないという。「ゴルフをしていないからこそ集中できたのかもしれませんね。欲もかかずにのんびりやっています。ただ中継ホールとかで16番あたりからテレビカメラが迫ってきてびっくりしました」と苦笑い。
昨年シニアオープン予選落ちという「ほろにがシニアデビュー」から、リベンジを心に誓い予選通過を果たした鈴木。決勝ラウンドでも手引きカートのセルフプレーなので、自分のゴルフに集中できる。それは鈴木にとって新しい挑戦の始まりになる。