今季シニアツアー第6戦「コマツオープン2023」の第1ラウンドが石川にある小松カントリークラブ(6,958ヤード/パー72)で9月7日に行われ、8アンダートップにはシニアツアー未勝利の南崎次郎(53)、1打差2位に前年覇者の深堀圭一郎(54)がつけている。トップと3打差の5アンダーには渡部光洋(51)と梶川武志(52)が続いている。
シニアツアー参戦4年目、ツアー未勝利の南崎次郎(53)がコマツオープンの大舞台で第1ラウンドを64ストロークというビックスコアを叩き出し、8アンダーでトーナメントリーダーの座についた。
南崎はイン10番からスタート。13番でセカンド残り110ヤードから1メートルにつけてバーディーを先行。14番パー5では右ガードバンカーから37ヤードを決めてチップイン・イーグル。17番はセカンド156ヤードを7番アイアンでまたもや1メートルの距離につけスコアを伸ばすと、18番パー5で右ガードバンカーから40ヤードの距離をねじ込んで2つ目のイーグル奪取に成功した。
後半のアウトコースでも快進撃は続く。1番パー5でさらに1つスコアを伸ばしたが、5番まで一進一退の攻防が続く。しかし8番パー3でティーショットをバンカーに入れたが、ピンまで10ヤードの距離をキャリーでカップインすると、最終9番では5メートルのフックラインを読み切って連続バーディーでフィニッシュ。2イーグル、6バーディーそして2ボギーという内容でまとめ、堂々の初日首位スタートを切った。
2020年にシニアデビューしたが出場2試合では結果が出せず、賞金ランキングは63位。翌年3月に瀬戸内海ゴルフクラブで行われたシニア最終予選会では堂々の6位に入りシーズンをフル参戦したが、その年のランキングは54位。2022年トム・ワトソンゴルフコースでの最終予選会に挑戦し6位に着き、再びフル参戦するも、ランキングは56位に終わる。「全部フル参戦しているのに、50位に入れず一次予選から受け直し。だけど予選会はどういうわけだかうまくいくんで、予選会キングなんて呼ばれちゃってね。それも良くないなとは思っているし、もう予選会は行きたくないんですよ」と本音を吐露する。
2023年の最終予選会はいぶすきゴルフクラブで行われ、ここでも9位に入り今シーズンのシニアツアーメンバーとして参戦中。8月のマルハン太平洋シニアまで49位と好調のきっかけを探ってはいるが、少し手ごたえを掴み始めているという。
「いつもは奥さん(由美子さん)が帯同キャディなのですが、今年のファンケルクラシックでは大会でキャディを手配してもらって。そのキャディさんのグリーンの読みとパッティングのタッチがマッチして、ものすごく頼りになったんですね(ファンケル18位タイ)。だからコースメモのグリーンの矢印向きとか含めてグリーンリーディングが重要だって改めて知って。今回は特にラインを気にしながらやった結果だったのかもしれません」と南崎は振り返った。見えないものを感覚だけでやって入るわけがないという気付きがあり、ゴルフの情報集約と分析にいよいよ開眼し始めていた。
グリーンリーディング以外にはバンカーショットが絶好調だった。2つのイーグル、1つのバーディーはいずれもバンカーから放った繊細なショット。「今年の春先から(友人である)小山内モデルのウェッジに変えたんですよ。いわゆる地クラブで、このウェッジの相性が抜群に良くて。これ以外に考えられないし、もう1セット予備で購入してあるのですが、今自分にとって最強のウェッジ。全信頼をおいてプレーしています」と絶賛するギアが、今回バンカーで最高の役目をはたしてくれたのだった。
南崎にとってはゴルフ以外にも、小松の地で嬉しい出来事に遭遇していた。大会前日の練習を終え、宿泊先に戻る途中にある小松基地近くの公園で人だかりを発見したという。航空自衛隊小松基地は戦闘機部隊が所属する日本海唯一の基地で知られ、航空ショーなど航空ファンを楽しませる地域に根差したイベントや、海外から来日する戦闘機も数多い。その日はオーストラリア空軍のF35戦闘機などが姿を現し、基地周辺は戦闘機ファンでいっぱいだった。「もともと戦闘機パイロットを目指していたんです。ちょうど戦闘機(F15)の離陸を真下から見たんですよ。もう鳥肌立ちますよね。すっかり興奮しちゃって『戦闘機のようなティーショット撃つぞ』ってね(笑)。インスタにもすぐ載せちゃったし、すごい嬉しい出会いでした」と小松ならではの演出に、南崎は元気を受け取っていたのだ。
小松基地から力をもらって好スタートを切った南崎。「頑張ります。相当嬉しいですよ。だけど浮かれてはいません(笑)。もうこれまで何十回と失敗しているし、同じ轡は踏みません。冷静にやります」と口元を引き締めた。
「優勝を狙える位置でゴルフができたら、それはプロとして幸せなこと。コツコツとやります。それだけです」。これまでシニア最終予選会には4度挑んできた。念願のシニアツアー出場が叶い、予選会後に嬉し涙を流したこともある。奥様と二人三脚でようやくここまでやってきた3年間の誇りを胸に、南崎はのこり2日間「コツコツ」と戦い抜く覚悟を決めていた。