51歳の誕生日まであと8日というタイミングで、宮本勝昌にとってシニア9戦目となるファンケルクラシックで念願のシニア初優勝を飾った。現役のレギュラー選手ということもあり、これまでのシニアツアーの成績は8試合すべて1ケタ順位と強さが光る。最終日最終組で戦ったのは8試合中4度。つかめそうでつかめなかったシニアツアー優勝のタイトルを、地元開催のファンケルクラシックで手中に収めた。
最終日最終組は、レギュラーツアーで戦っていた細川和彦(52)と、ゴルフの名門・水城高等学校から日大ゴルフ部と同級生で、これまで35年もの間、一緒にゴルフで戦ってきた片山晋呉(50)が同組だった。首位9アンダーの細川とは、2打差で最終ラウンドがスタートした。
大会最終日は熱中症対策のため、アウト2番ホールから8番ホールまで選手はカート乗車が可能という競技の条件が提示された。そのためギャラリーの安全性を考慮し、観戦不可という無観客でのラウンド。宮本は3番パー4で5メートルのバーディーパットを沈めると、5番パー4では上から5メートルのラインを流し込んで2つ目のバーディー。「歓声があがらないんだね」と笑ったが、静かなコースで徐々に集中力を高めていく。9番パー5では2オンを狙ったが、風の読みもはずれショットはグリーン左奥へ。アプローチを2メートルに寄せてバーディーを決めた。
ハーフターン後の10番パー5では、グリーン奥のバンカーショットがピンまで5メートル。ラインを読み切りバーディー奪取。じわりじわりと細川を1打差に追い詰めていく。続く11番で3メートルを沈め3連続バーディー。この直後に雷雲接近の為、競技が90分間中断する。
通り雨も降ったことで、プレー再開時にはコースコンディションも微妙に変化する。そんな中でも宮本は集中力を切らさずにいた。中断後の13番パー4で3メートルのパットを決め、スコアを伸ばせない細川を逆転。14番をボギーとしたが、15番で1メートルのバーディーからさらにギアを上げる。17番パー3ではピン横6メートルのパットを沈め、この時点で細川と3打差。最終18番ホールはセーフティーにゲームを進めてパーセーブとし、8バーディー1ボギーの今大会ベストスコア65を出し、通算14アンダーで見事な逆転、シニア初優勝を飾ることができた。
宮本にとっても「優勝の手ごたえは最後までつかめなかった」と言わしめるほど、予断を許さない白熱したゲームだった。
宮本にとって初出場のファンケルクラシック。地元静岡での開催で、今回は悠々自宅から通える距離にある裾野カンツリー倶楽部だ。大会最終日は父・勝雄さん、妻・朋美さんと長男が応援に駆け付けて、宮本の優勝をしっかりと見届けてくれた。「この暑い中、父親も毎日一生懸命応援しに来てくれたので帰って体調を崩さないか心配ですけど、少し親孝行が出来たのかなと思います。父親の前で優勝できたのはいつ以来だったかな。4年前の中日クラウンズ優勝時は家族の前で披露できました。それはやっぱり嬉しいです」と笑顔になる。
今回の勝因は、宮本の強みだという「ミドルパットのパッティング」。5メートル前後のバーディー距離をきっちりと決めきれれば、ビックスコアが出るということを改めて確信した。初日、2日目とミドルパットに嫌われたというが、最終日に向けてなにかきっかけがあったのだろうか。「毎ホールいい所を探しながらやっています。毎日、試行錯誤を繰り返しています。プロゴルファーはみんなそうだと思いますけど、今日良かったから明日良いとは限らないし、これは一生悩みながら修行みたいなものなんですよ」と宮本は笑う。日々練習を重ねた結果の優勝だった。
「ゴルフは、凌いで凌いで。その中で少ないチャンスをどう生かすかということ。米国チャンピオンズツアーの挑戦も視野に入ってきて、向こうでは100パーセントに近いものを常に出せるようにしておくことが求められます」。宮本はやるべきこと、やってみたいことが目の前にある。
百戦錬磨の精鋭揃いとして知られる米国シニアのチャンピオンズツアー。今年宮本が出場したチャンピオンズツアーのひとつ「全米プロシニア」では10位という成績を出せたことも、今の自信につながっている。「自分が良いプレーをすれば優勝争いまでいけるんじゃないかってキッカケを掴ませてもらいました。若い時に挑戦したPGAツアーではなかなかうまくいかなかったですが、当時の選手も同じシニアになっていて、今なら勝てるのかもしれない。今回はスポット参戦だったこともあり、ゲスト扱いだったので、やるならメンバーの一員として挑戦してみたい」と新たな目標も掲げる。
「レギュラー12勝」を挙げている宮本に加わった「シニア1勝」という記録。「どの大会でも優勝を目指してやっています。ようやく初優勝できたことは嬉しいです。これでシニア入りしたんだなと。シニア最初の一歩だと思っています。だからこそ感慨深いものがあります」と口元を引き締めた。
「この優勝でシニアになったなと実感しましたし、これからもシニアツアーを盛り上げていけるよう、シニアの一員として次の試合から頑張っていきます。いつも周りで支えていただいている家族、先輩仲間たち、そしてすべてのサポーター、スポンサーの方々に、心から感謝しています。本当にありがとうございます」と頭を下げた。来週は宮本の地元・御殿場で開催されるマルハン太平洋シニア、翌週はレギュラーツアーのフジサンケイクラシックとシニア・レギュラーのスケジュールがミックスになる連戦が始まる。シニアの顔になったと自覚を抱いた宮本勝昌が、今後のシニアツアーを盛り上げる。