今季シニアツアー第2戦「ノジマチャンピオンカップ箱根シニアプロゴルフトーナメント」(7,060ヤード/パー71)の最終ラウンド。首位3打差3位からスタートしたシニアルーキーのI・J・ジャン(50=韓国)が、7バーディー・1ボギーの65で回り、133ストローク通算9アンダーでシニア初優勝。首位スタートの深堀圭一郎(54)、シニアルーキーの増田伸洋(50)、阿原久夫(51)が通算8アンダーで2位に入った。大会ホストプロの藤田寛之(53)は2つスコアを伸ばしたが19位に終わった。
レギュラーツアー3勝を挙げている韓国出身のI・J・ジャンが念願だった日本シニアツアーで優勝を飾った。シニア参戦2戦目で手に入れた優勝は「夢みたい」と、ジャンは表彰式後も余韻に浸っていた。
第1ラウンドは68をマークし3位タイ。最終ラウンドは、注目が集まる最終組の1つ前の組でスタートした。序盤から連続バーディーと流れを作り、前半2つのパー5では2オン2パットに収めスコアを4つ伸ばし、首位でスコアを伸ばしきれない深堀を捉える。後半10番パー3では3メートル、14番パー3では10メートルが決まり、この時点で通算9アンダー単独首位に。しかし続く15番パー5では3パット。この2日間で初のボギーを叩いてしまったが、16、17番ホールをパーでしのぎ、最終18番パー4では同組のプラヤド・マークセンから「アイ・ジェイ、プレーオフだめだからね」と言われ、スコアボードを見ると優勝争いが4人になっていることを知る。ティーショットはフェアウェイに。セカンド残り150ヤードを9番アイアンで5メートルにつける。集中力が高まったバーディーパットは、想定ラインに乗りカップイン。後続の最終組はバーディーで追いつくことができず、I・J・ジャンが第7回大会のチャンピオンに輝いた。
シニア初戦だった開幕戦「金秀シニア沖縄オープン」はジャンにとってワクワク・ドキドキだったが、終始とにかく慌ただしかった。「10年以上も長い付き合いのあった先輩たちと再会は、挨拶とか話が盛り上がってしまって、なんだかずっと忙しかったんですよ」とほほ笑んだ。備えてきたはずの開幕戦成績は53位。ショットの不調に悩まされ、なんとか状況を打破したいと、思い切ってアイアンを愛媛県松山市にある地クラブメーカーの「グランプリ」にフルチェンジした。今週月曜に届いたオーダーメードのアイアンセット一式を持って、名古屋から3時間かけて会場入り。練習ラウンドで使ってみると求めていたショットの感覚に近かった。「風の強かった第1ラウンドのほうが調子が良かったっていうくらい、思うようなショットが打てていました」とジャンは振り返った。
新調したアイアンの手ごたえに加え、先輩プロとの練習やラウンドが非常に参考になったという。「初日に同組だった宮本勝昌さんの良い流れとか、今朝は練習場で谷口徹さんのパッティングを見させてもらって勉強になったんです。上手なひとたちから学ぶことは多いんです。みんなレジェンドですから」と、周囲の状況を把握しながら試合を楽しんでいるようだ。さらに「この箱根カントリー倶楽部は素晴らしいコースです。攻めがいのあるレイアウトや、美しい景色、フェアなコースコンディションを用意してくださった大会のみなさまに感謝しています」。ジャンは頬を緩ませた。
ジャンの日本ツアー活躍を振り返ると、2005年のJGTツアーに参戦後、3試合目となる「ダイアモンドカップ」で初優勝。2012年、2015年には「中日クラウンズ」で優勝を重ねたが、左手首の故障で2018年にシーズンを離脱。公傷制度利用し治療に努めたが2019年以降、ツアー参戦を断念した。
ゴルフができない時期が続いたが「まだまだ選手として戦いたい」と思いばかりが募る。日本シニアツアーに参戦するには、日本プロゴルフ協会の会員か、外国人選考会を通過後、最終予選会で上位に入るしか道がない。ジャンは2022年、日本プロゴルフ協会の資格認定プロテストに挑戦することを決意し、その年の最年長で最終プロテストに合格。2023年からPGAトーナメントプレーヤーとして入会。今年は「レギュラーツアー2勝以上を挙げているもの」という1度だけ行使できる権利で参戦している。
シーズン前には、米国ロサンゼルスにある自宅でゴルフに打ち込んできた。年齢に見合うトレーニングと、自分にできるだけの打ち込みを続けてきた。「シニアになって身体のケアも考えるようになった」というものの、大好きなハンバーガーを毎日ほおばるという無邪気な一面も。そんなジャンには新しい夢がある。「欲張りだと思われますが、若いうちに賞金王を狙いたい。今日初めてマークセンさんと回りましたが全部が上手。これが去年の賞金王のゴルフなんだなって」。2戦目にして得られたものがたくさんあるようだ。
「シニアツアーは試合に出ているみんなが笑顔で楽しいです。先輩のみなさん、これからもよろしくお願いします」と、ジャンは流ちょうな日本語で、シニア1年生らしさを魅力たっぷり表現した。最終日にスコアを爆発させ、一気に上位へ食い込んできたシニアルーキーの活躍が、今季は大いに期待される。