プロテスト合格者52名による「第25回日本プロゴルフ新人選手権大会 富士可児カップ」の最終ラウンドが12月21日に行われ、首位1打差の3アンダーからスタートした古川龍之介(フリー・22)と首位スタート河合和眞(犬山CC・26)が通算5アンダーで並びプレーオフへ。2ホール目で古川がボギーパットを外し、河合が新人戦優勝を飾った。河合には優勝賞金100万円と同コースで来年7月に行われる日本プロの出場権が与えられた。
先週行われた入会セミナーでは、接遇の講座で「プロゴルファーとして初優勝を飾ります」とスピーチした河合。それは有言実行という形になって優勝が現れた。努力を続けた結果でもあった。入会セミナーは座学を中心とする講座が丸一日行われるが、河合は受講後、毎日車で15分ほどの距離にある打撃練習場に通った。「新人戦に向けて、ショットを身体に染み込ましたかったんです」と理由は明確。200球前後の打ち込みを続けていたと明かしている。
入会セミナーの1週間を終え、河合にとって楽しみにしていた新人戦だった。所属する犬山カンツリー俱楽部と富士カントリー可児クラブ志野コースは車で40分ほどの距離にある。中部エリアで開催する公式戦の日本プロゴルフ選手権ということで、出場資格を獲得し、支配人やメンバーさんに新人プロとしての雄姿を見てもらいたいという思いがあった。そんな気持ちが新人戦・第1ラウンドを4アンダー首位という成績につなげられた。
最終ラウンドは強い寒気の中で風が吹き荒れる一日。吐く息は白く、手はすり合わせるほど冷えていた。河合は首位スタートというプレッシャーも加わる中での戦いが強いられた。前半は難易度の高いホールが続く中、パーセーブが続いた。打ち下ろし打ち上げというレイアウトの16番パー4ではセカンドショットがグリーンを捉えられずガードバンカーへ。ピンまで30ヤードの距離があったが、得意のウェッジでしっかりとピンに寄せてパーセーブとしピンチを凌いだ。
後半に入り、2番パー5ではマネジメント通りにセカンドをきっちりと刻み、残り73ヤードをピン2メートルにつけて初バーディー。続く3番ではセカンド残り102ヤードをウェッジで80センチに寄せて連続バーディーと波に乗る。4番パー3では強風が吹き、流れの良かったショットはピンまで15ヤードを残してしまった。しかしアプローチを1メートルに着けてパーセーブし難所を乗り越えた。6番パー4では、セカンドショットをミスしてガードバンカーへ。しかし集中力は切れなかった。バンカーショットが狙うラインを辿りカップインでバーディー。この時点で後続とは2打差。上がり3ホールでスコアを守れば優勝が近づくはずだった。しかし8、9番といずれも1.5メートルのパーパットを決めきれずに3パットで2連続ボギー。通算5アンダーに並んだ古川にプレーオフのチャンスを与えてしまった。
小学校から競技ゴルフをしている河合にとっては5回目のプレーオフ戦。愛知工業大学ゴルフ部1年時にはプレーオフを制し、東海テレビ杯争奪中部学生ゴルフ選手権で優勝するなど、これまで4戦3勝と強さが勝っていた。
プレーオフ2ホール目のグリーン上。古川が3メートルのパーパットを80センチほどオーバー。河合は決めれば優勝となる2メートルのパーパットをわずかに外した。お先にカップインを済ませてボギーとし、古川のカップインを待った。これまでパットが好調だった古川の80センチのパットが外れた。「え」。河合は絶句した。グリーン上で時間が止まった。「勝った・・・のか。勝たせてもらったのか」と頭は真っ白になった。自分でウィニングパットを沈めたのではないので、手ごたえが感じられないのだ。「だけど、これもプロの厳しい勝ち負けの世界なんですよね。優勝は嬉しいですけど、古川さんとはすごくいい戦いでしたし、この幕切れはなんだか理解しがたいです」と本音ものぞく。
それでも有言実行して掴んだプロ初優勝のタイトルを、河合は心から喜んだ。「最終ラウンドでは4回ピンチホールでZodiaさんのウェッジに助けられました。それだけはなく、今年プロテスト受験直前までドライバーイップスに悩んでいたところを、Zodiaさんのドライバーを使わせてもらうことで、自信もってプレーオフで振り切ることができました。この一年はレベルアップできた年でした」と笑顔をのぞかせた。
そして「親にはこれまでどれだけゴルフで迷惑をかけてきたかわかりませんが、優勝できたことをいちはやく報告したいです。この優勝を喜んでもらえたらいいです」と穏やかな笑顔をみせた。さらに「犬山カンツリー倶楽部の支配人はじめスタッフ、メンバーの皆様にも、今回の優勝を早く伝えたい」と河合は声をはずませた。
毎日欠かさずに練習を重ね、目標に向かって諦めない気持ちも大きく成長。「日本プロを楽しみたいので4日間プレーできるように頑張ります」。26歳の河合が得た優勝は、少し手ごたえを感じなかったが、得られたものは大きいに違いない。河合は新人戦の優勝を誇りに腕に磨きをかけて、来年日本プロの舞台で堂々と戦うことを誓った。