2023年シーズンのツアー締めくくり「日立3ツアーズ選手権」では、PGAチームが4年ぶりに優勝するかと期待されたが、優勝したJLPGAチームに13ポイント差もつけられPGAチームは2位。頑張りを見せたPGAチームだったが、今大会最高齢出場「61歳」の久保勝美がベテランの技を随所に繰り広げて存在感を示した。久保は2018年の大会でPGAチームの優勝に貢献したメンバーの一人であり、今年も密かに活躍を期待されていた。
人生の先輩順ということで、久保は今年のチームリーダーに任命された。そしてチームのムードメーカーとして全力を尽くした。PGAチームは当初、飯島宏明(賞金ランキング7位)がメンバーとして発表されていたが、大会本戦の前日に腰痛のため欠場を余儀なくされ、急遽今年シニア2勝をマークしている塚田好宣が代役で出場することに。メンバー変更というハプニングもあったが、久保は決意を新たに、PGAチームらしい最高のパフォーマンスを見せようと、とにかく仲間とコミュニケーションを図ろうと意識した。
大勢のギャラリーに囲まれた1stステージの1番ホールティーグランド。久保はワクワクしながらグループ1のスタートを見送った。1グループ6名でプレーをするという変則競技であり、6名分のショット時間が計算されている。だからスタート時間も通常よりもゆとりを持たせて1組目と3組目の間は30分という時間もかかるのだが、最終組でプレーする久保にとっては、いてもたっても落ち着かない様子。「シニアはせっかちなんだよね。早くスタートしたいよ。でも順番だからね。うん、あと30分もあるならドライバーの練習でもしてこようかな。でもさ、今度時間に間に合わなくて呼び出しされたらさ、恥ずかしいしねえ」と目を輝かせてソワソワ。3ツアーズならではの大観衆を目の前にして、久保は大会の盛り上がりをしっかりと味わっていた。そして何かを得ようと必死に試合に向き合った。
「やっぱりね、JGTO、JLPGAから一流のトップが集まる大会ということに尽きます。ミート率とか方向性、小技の上手さが際立っているのか思ってたんですけど、飛距離がすごい。パワーとスピード、飛距離に圧倒されました」と新たな発見もあった。「櫻井さんとか、小祝さんといった女子もすごい飛距離が出てきてね。飛距離の出ない山下さんがユーティリティを駆使していること。距離感や方向性、その辺の小技の上手さにもうびっくりでした」。久保にとって5年ぶりの3ツアーズは、新たな発見であふれていた。「みんなそれぞれ飛距離の出る人は出る人、出ない人は出ない人なりのコースマネジメントなりね、その辺はやっぱりさすがトップで来てる人たち。いい勉強になりました。今年のオフにいろいろ課題をもらって、それを練習して、どこまでできるかわかんないですけど、来年もまた来れるように頑張りたいと思います」と充実した時間を振り返り、新たな目標を打ち出した。
久保は今年のシニアツアー「コマツオープン」でシニア通算2勝目を挙げ、賞金ランキング8位と好成績を残してシーズンを終えた。実は久保、シニアツアーに加え60歳以上の大会「関東グランドシニア」と「日本グランドシニア」で優勝するという今年は目覚しい活躍をしているのだ。それには61歳という年齢なりの過ごし方や身体への向き合い方がある。「視力の低下に伴い、グリーンリーディングが全くできていなかった。眼科に出向いて自分の状態を知り、視力矯正を始めました。60歳を過ぎて睡眠の質を向上させるようにもなり、そのあたりからパッティングの精度もあがりました」と振り返った。61歳の久保がプロとして長く活動を続けてられている理由がここにある。
「今年は最後に日立3ツアーズに出させてもらって本当に良い1年になりましたね。ゴルフ人生やってて大きなご褒美ですよ。毎年今年でシニアツアーに出れるの最後かなって思いながらやってましたが、来年もシニアツアーに出れるし、頑張ったご褒美でこういった大きな試合に出させてもらって、感謝しかありません」と久保はビックスマイルを浮かべた。PGAチームの顔、そしてリーダーとして十分な活躍を示した久保勝美。来シーズンもますますパワーアップした姿でツアーを楽しませてくれるに違いない。