60歳以上のティーチングプロ資格を持つ56名で競われる「第12回PGAティーチングプログランドシニア選手権大会」(6,344ヤード/パー72)の第1ラウンド。雨の影響を受け、当初予定していたスタート時間を2時間遅らせてプレーが行われた。初日首位に立ったのは、5バーディー・ノーボギーで回り67をマークした高橋正博(60)。2位タイは1アンダー71で小室英明(61)と長峰全(60)が続いている。前年覇者の伊藤正己(67)は5オーバー、77ストローク23位と出遅れた。
今年60歳の還暦を迎え、グランドデビューした高橋正博が、ティーチングプログランドシニアで初日首位と好スタートを切った。日本大学ゴルフ部出身で、普段は埼玉県熊谷市にあるリバーサイドゴルフ練習場でゴルフアカデミーを開校しており、校長を務めて20年以上のレッスンキャリアを誇る。「現在150人ほどのレッスン生がいらっしゃいます。トラックマンを導入したスクール形式の練習場レッスンやラウンドレッスンなどを通じて、これまで大勢のゴルファーと一緒に上達を目指してきました。ゴルフの楽しさをみなさんと共有できる仕事に携われて、充実した時間を過ごしています」と声をはずませた。
高橋は第1ラウンドで、5バーディー・ノーボギーの完璧なゴルフを展開した。もともと烏山城は学生時代にプレーしていたのでコースのイメージも持ち合わせていたという。1番パー5では70ヤードのアプローチをピン下3メートルに着けてバーディー発進。4番パー4は前日の練習ラウンドでティーショットOBを出している印象の悪いホールだったこともあり、その分慎重にマネジメント。上から1.5メートルのパットを沈めて2つ目のバーディー。7番、そして9番パー5でグリーン右手前バンカーから上手く寄せて、前半だけで4つスコアを伸ばした。
後半に入る前に、髙橋はクラブハウス内に張り出された準備段階の順位表を目視。「この時点でトップの予想スコアが3アンダーだったんですよね。僕はここで4つスコアを伸ばしていたから『絶対に3アンダーを超えてホールアウトする』と火が付きましたね」と振り返る。難易度の高いホールが続く後半でもショットが冴え、バーディーチャンスが続いていたが、16番パー3(164ヤード)で、6番アイアンを短めに握り1.5メートルに着けてバーディー奪取。気の抜けない上がり2ホールでもコースマネジメント通りに運んだがバーディー逃しのパー。それでもバーディー5つを量産し、第1ラウンドを首位発進と満足のいくスタートを切ることができた。
昨年はティーチングプロシニア選手権に出場し4位タイと上位でフィニッシュ。今年はグランド入りしたこともあり、5月に関東グランドシニア選手権、9月には日本グランドシニア選手権に出場している。そのグランドシニアでは埼玉出身の久保勝美が関東、日本タイトルの2冠を奪取。髙橋は久保と同じ埼玉を活動拠点としており、普段から練習や試合で先輩の久保と一緒に過ごす仲である。目の前で2冠を達成した久保から「髙橋、何やってるの?」と成績不振を責められていた。それは久保が高橋に対して期待を込めた激励だった。「ショットはいいのに、パッティングがあまりに不調でスコアにならなかったんですよ。何かやらないと、この状況は打破できないってずっと悩んでいました」と振り返った。
まず取り組んだのが視力の矯正。視力の低下、そして老眼と重なったこともあり、これまでトレードマークだったメガネからコンタクトに変えた。当初はボールが二重に見えたり全体がぼやけて見えたりしていたが「慣れるまで時間がかかる」と我慢した。しかし一向に視界がクリアにならず、もう一度コンタクトを調整してもらった結果、これまで見えなかった景色もボールもクリアに見えるようになったのだ。「時間が必要じゃなくて、視力にあわないコンタクトだったみたいです。ゲームに必要な情報が集まってきたんです。ようやく普通の状態ですよ」と表情も明るい。
さらに久保から「パットはカップに入ればいいんだよ」とアドバイスをもらったことも、スコアアップの後押しになった。「これまでパッティングのストロークとかフォームばかりに気をとられ、トラックマンを分析してまで原因を追究していたのですが、久保さんから自分なりのフォームとか打ち方でいいと言われて、腑に落ちました。思った通りのパッティングラインに打つことがスコアメイクには求められるということなんですよ」。先輩の久保からもらったヒントで、髙橋のストレスが解消しつつある。
「それと烏山城は私が出演した『ゴルフは右脳で上達する』というプロモーションビデオを撮影したんです。当時はVHSで販売していたかな。ここで3日かけて撮影した思い出のコースなんです」と縁があることが発覚。今もレッスンで視聴してもらうこともあり、レッスン生からは「先生誰ですか?」と笑いも誘う。烏山城との縁を感じつつ、髙橋がこの流れを生かして久保に吉報を届けたいところだ。