「糸を引くように、まっすぐな3番ウッドを打ってましたよ」と同組の選手から絶賛されたショットで優勝を手繰り寄せたのがプロ4年目の森岡俊一郎(宝塚GC)。第1ラウンドでは2アンダー5位グループの一人で、最終ラウンドは6バーディー・ノーボギーと完全プレーを見せ、通算8アンダーでPGA競技初優勝を飾った。
第1ラウンドは2アンダーで上位フィニッシュした森岡。「予選通過できて良かった」という満足度だったが、得意とする3番アイアン、そして3番ウッドの良い手ごたえを感じていた。
スタート1番ホールからついていた。セカンド175ヤードの距離から左に引っ掛けグリーンを捉えられなかったが、カラーからのアプローチがカップイン。2番パー5はアプローチをしっかりと寄せて連続バーディー。5番パー4ではセカンド残り133ヤードがピンの右について3つ目のバーディー。前半のハイライトは9番パー4。ティーショットが左の林に入ってしまい、残り250ヤード。得意の3番アイアンでしっかりと寄せてパーセーブ。この時点で優勝圏内に入った。
後半に入り10番パー5ではティーショットが左バンカーの縁に止まってしまったが、3番アイアンで残り40ヤードまで着ける。アプローチをしっかりと寄せて4つ目のバーディー。12番パー4では残り140ヤードを手前からピンまで1メートルに寄せてさらにスコアを伸ばす。リーダーズボードを常にチェックしていたという森本は「これはチャンスがあるかもしれない」と慎重なプレーを決意。13番からのティーショットは、得意とする3番ウッドを多用し、確実にパーセーブができるマネジメントに徹することに。17番パー3では、219ヤードを4番アイアンで軽めに打ち「狙い通りの手ごたえを感じた」と本人も絶賛するほどのショットで、ピン左サイド約2メートルに着けバーディーで単独首位に。最終18番では「緊張しました」と言いつつも、リスクを取らず3打目でグリーンを捉えて2パットでパーセーブ。森岡は他の追随を許さず、ノーボギーというお墨付きの優勝を飾ることができた。
森岡は2018年のプロテストに合格。プロ入り後は兵庫県にある宝塚ゴルフ倶楽部に所属し、昼はコース業務に携わり、夜は大阪の阿波座スポーツゴルフ倶楽部でレッスン活動をしている。試合がない時は週5日みっちりと昼夜レッスンと練習に励んでいるという。「2020-21シーズンでAbemaTVツアーに出場できたのですが、予選通過は半分ほど。飛距離も足りず、全く歯がたたなくて。それからは身体づくりを見直して、ショートゲーム、特にグリーン周りの精度を上げようと、ずっと練習に取り組んでいたんです」と明かしている。
ショートゲームが苦手だという森岡のキャディバックにはウェッジが4本常備されている。その分、長いクラブには、ドライバー、3番ウッド、そして3番アイアンの3本を中心にセッティングしている。「この大会だから、ということではないんです。高校2年生から使っている3番アイアンが得意クラブで、飛距離は220ヤード。3番ウッドが260ヤードなので、この間を埋められるクラブは特になくて。でもゲームはマネジメントですし、ショートゲームをどうやって成功させるかということだと思っています」と、AbemaTVツアーでの苦い経験が生きている様子。「これまでの練習の成果が少し出てきたのかもしれません」と我慢を続けた日々を振り返り、この勝利の喜びをかみしめていた。
優勝スピーチでは「AbemaTVツアーもシード権も無いという状況で、今回このような大きな大会を用意してくださって感謝しています。日本プロに出場するからには、本戦でもしっかり活躍できるように、練習を重ねて頑張ります」と口元を引き締めた。優勝賞金の240万円の使い道は?と質問すると「まさか、まさかの優勝で・・・。僕の年収以上なのでびっくりしています。今回一緒に関西から車で来た池見プロと美味しいごはんがしたいですね」と実感がわかない様子も率直ですがすがしい。森岡がプロゴルファーとして大きな夢を抱き、日々挑戦を続ける姿勢に、ゴルフの神様がほほ笑んでくれた。