第6回PGAティーチングプロ女子選手権大会は21日、兵庫県・新宝塚カントリークラブで最終ラウンドを行い、強風が吹く難しいコンディションの中、ティーチングプロA級会員・新田有希が我慢のプレーを続けてイーブンパー72でスコアをまとめ、通算3アンダーで優勝を飾った。後続の鈴木磨夜に4打差をつけて栄冠を手にした。
優勝インタビューで新田は、前夜から抱えていた複雑な心境を率直に明かした。「守りたい気持ちと攻めたい気持ちがあって、感情がぐちゃぐちゃでした。2位とは僅差でしたし、いつひっくり返ってもおかしくない状況だったので、本当に落ち着かなかったです」と話している。
首位で迎えた最終日。優勝が見える位置にいるだけで葛藤があった。優勝を意識する一方で、意識しすぎて崩れてしまう自分の姿も想像してしまう。ポジティブとネガティブが交錯する中で朝を迎えた。
それでもティーイングエリアに立つと、意外なほど落ち着いている自分がいた。「1番ティーショットは今日一番良かったかもしれません」と言えるほど、良い集中ができていた。
第1ラウンドから好調だったショートゲームは最終ラウンドも安定していて、グリーンを外しても確実にパーを拾い、周囲がスコアを伸ばそうとする中、自分のプレーに没頭していた。「風はあまり得意じゃないので」と言い、「前日から天気予報を確認して、どちらから風が吹くのかしっかり調べて準備しました」と準備は怠らなかった。
5メートル前後の風が吹く中、事前に作成したメモを何度も確認しながらプレー。風向きを読み違えないことを最優先に据えた。焦らず、慌てず、自分が準備してきたことを信じ続け、優勝を目指した。「油断せずに、自分の納得できるゴルフだけに集中していました」と36ホールを戦い抜き、ウィニングパットを沈めることができた。
全国規模の大会での優勝は約4年ぶり。「やっぱりうれしいです」と笑顔を見せたが、その言葉には長い競技人生の重みもにじむ。
新田がゴルフを始めたのは18歳。美容専門学校への進学を考えていたが、母の勧めでゴルフの道へ進んだ。九州ゴルフ専門学校で学び、その後は研修生としてプロゴルファーを目指した。しかしJLPGAプロテストには10回以上挑戦しながらも合格には届かなかった。
「最後と決めた挑戦が終わった時に、トーナメントプレーヤーの道はきっぱり諦めました」。それでもゴルフから離れることはなかった。レッスン活動に携わるうち、人と接する楽しさに魅了されていく。
ティーチングプロ資格取得を目指し、基本ゴルフ教本を徹底して学習。2024年度の入会者の中では最優秀成績を収め、レッスン業に携わるゴルフ人生のスタートを切った。現在は広島県内を拠点にプライベートレッスンや広電inDOORSやゴルフメイト高屋で指導にあたっている。
今回の優勝は、そんなレッスン活動にも新たな気づきを与えるものになった。
「今までは結果が全てだと思っていました。でも今回、自分が納得できる準備や過程があってこそ結果につながると実感しました」と収穫があったという。
そして強いプレッシャーの中で思うように体が動かなくなる感覚も改めて経験した。「普段ラウンドされる生徒さんも、きっとこういう気持ちなんだと思いました。だからメンタル面や準備の大切さを、これまで以上に伝えられると思います」。今回の得られた競技経験を指導へ還元することが、新田がティーチングプロとして伝えたいことでもある。
「これまでは自分のためのゴルフでした。でも今は、お客様のためのレッスン活動が楽しい。人とのご縁がどんどん広がっていくことが本当に幸せです」。
優勝後は、日頃から支えてくれる人々への感謝も忘れなかった。スポンサーとして活動を支援する「ライン広島」、アンバサダーを務める「京ばあむ」への感謝を口にし、「応援してくださる皆さんのおかげです」と頭を下げた。
そして最後に名前を挙げたのが、師匠であるティーチングプロでゴルフメディアで活躍する石井良介だった。
ツアープロを目指すか悩んでいた時、新田は石井に相談したという。「あなたはティーチング向きの性格だよ」。その言葉が転機となった。
師匠については「ティーチングプロとしての在り方や考え方、礼儀とかしゃべり方とか、石井さんのやり方をみて勉強させてもらっています」と明かす。さらに「レッスンを受けてくれた生徒さんに対しても、相談に来た時は頭の中がぐちゃぐちゃした状態で来られているのに、帰るときはこれだけやろうみたいな感じで、頭をクリアに変えられるような石井流のレッスンは、ほんとうに参考になります」と常に学びがあるという。
「師匠と出会ってから初めての優勝です。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします」。
師匠である石井は、ティーチングプロ女子選手権最終日に、偶然にも兵庫県のゴルフ場で仕事があり「新田さんが優勝するなら、サプライズで会場へ行こうと思って」と事前に関係者に相談していた。会場に到着し表彰式には愛弟子のスピーチを見つめ「本当に、良かったですね」と目を細めた。
新田の優勝トロフィー記念撮影後には「よし、お祝いですよ」と小さなサイズのペットボトルを取り出して、仲間と一緒にウォーターシャワーの演出も。くしゃくしゃになった笑顔で、駆け付けた仲間に「ありがとうございます」と喜びを伝えた。
トーナメントプロへの道をあきらめてからはティーチングプロの第一線に立つという強い思いで、こつこつと努力を続けてきた日々。そしてついにつかみ取った日本一のタイトル。その勝利は単なる競技成績ではなく、ティーチングプロとして歩む未来を照らす大きな一歩となった。